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ドイツのマイスター制度ってどんな制度?

更新日:2023年3月7日



「ドイツ製品=高品質」なイメージの背景にあるのは、確かな技術力。


この技術力を支えているのが、ドイツのスペシャリストである職人・職業人であり、そのスペシャリストを育成する制度を「マイスター制度」といいます。



今日、世界中からその道のプロになるために、多くの人がドイツにやってきます。

もちろん日本も例外ではなく、年々ドイツでの研修に参加する日本人の希望者は増えているのが現状です。



今回はこのドイツ社会、製造業を支える「マイスター制度」について、さまざまなポイントに迫っていきましょう。




マイスター制度とは

日本でよく「マイスター制度」といわれているドイツの教育の仕組みは、ドイツにおいては「デュアルシステム」といわれています。


ドイツにおいて「マイスター」は、特に手工業系の職種における最高峰の国家資格を取得した人のことを指します。

一方で、工業系の職種においてもマイスターと呼ばれる職種もあるため、その線引きは非常に不透明な点があります。











実際には、マイスター制度=デュアルシステムというよりは、デュアルシステムという教育の枠組みの最終に、マイスターという最高峰の国家資格があ

る、という位置付けになります。




日本では広くマイスター制度という言葉が使われている点を踏まえ、この場においても「マイスター制度」という表現で説明します。


マイスター制度の「教育の仕組み」における4つのポイント



①大学に進む以外の教育制度として、300職種以上のスペシャリストを育成するための教育の仕組み、「マイスター制度(デュアルシステム)」がある

② 大学からスペシャリストへの移行や、スペシャリストから大学への移行が可能である教育の仕組みがある


③ 自分が一度選んだ職種が合わない場合には、職種の変更が教育の仕組みのなかで可能



④ 複数の資格取得が可能


ここで大切なポイントは、進路は変更が可能だという点、また職種においても変更が可能、またはダブル、トリプルの資格取得も可能な制度であり、自分のキャリアの方向転換が臨機応変に可能であるという点です。


マイスター制度の歴史

「マイスター」の歴史は、中世の手工業者の同業組合(ギルド)からといわれており、1900年に手工業会議所を設置し、1953年の手工業秩序法にもとづき改定され、今にいたったといわれています。


この歴史が、「ドイツ=高品質」のイメージをつくっていったんですね!




マイスター制度の職種



「マイスター制度」でスペシャリストになるための職種は、多岐にわたります。

手工業系では94種類、そのうち開業資格として「マイスター」の資格が必要な職種は41種類。


その他マイスター制度の中でスペシャリストになる仕組みとしては、工業系があり、その職種は300種類以上とも言われています。

工業系特徴としては、ITエンジニア、電気設備工、自動車製造、小売関係も含まれ、フローリストや料理人も工業系に含まれます。

全体で合わせて327種類あります。実際には職種が手工業と工業にまたがっている職種もあります。



手工業系と工業系のマイスターの図

このように、たくさんの種類の職種のスペシャリストになるための教育制度が、マイスター制度なんです!





マイスター制度の教育の道のり(見出し)


それでは、「マイスター制度」とは、どのような教育制度なのでしょうか。具体的な内容を紹介していきます。


「マイスター」を獲得するには、基本的には小学校5年生から通う、「レアルシューレ」、「ゲザムトシューレ」、または「ハウプトシューレ」、場合によって進学校「ギムナジウム」を卒業し、まずは「Geselle (ゲゼレ)」を取得するために、研修先としての就職活動を開始します。





そして、就職するとともに職業学校に通い、今度は「デュアルシステム」で学んでいきます。


「デュアルシステム」の教育システムのなかで、原則は3年または3年半の研修期間を経て、筆記試験と実務試験を受け、合格を目指します。

合格すると、国家資格である「Gessellenbrief(ゲゼレンブリーフ)」を授与されます。


その後数年は、ゲゼレとして技術力をつけながら資金準備をします。


そして、「マイスターシューレ」へ入学します。

マイスターシューレは、半年間コースでマイスター試験までの準備をする仕組みや、夜間週末に学校に通いながらマイスター試験を受ける方法など、職種によって様々な形態が存在します。


無事、マイスター試験の筆記試験と実務試験の両方に合格すると、「Meiterbrief(マイスターブリーフ)」という、マイスターの称号を得ることができます。



以上が、マイスターを獲得するまでの、大まかな流れです。

ここからは、より具体的に、マイスターを獲得するまでの道のりを学んでいきましょう!





国家資格「ゲゼレ」の取得


「マイスター制度」の道のりの第一ステップは、「実践力と論理」を同時並行で学び実力をつけながら、プロとしての認定国家資格「ゲゼレ」を取得します。


マイスター制度、すなわちデュアルシステムのデュアルとは、「現場で実力をつける+学校で理論を学ぶ」、つまり両輪で教育を受ける仕組みを意味します。


会社または工房で実践力を学びながら、同時並行的に学校に通いスペシャリストを育成する仕組みが、マイスターまでの道のりの第1ステップになります。


・国家資格「ゲゼレ」までの具体的研修スタイル


一般的的な研修の場合:週に3〜4日現場研修、1〜2日は職業学校に通う

ブロック研修の場合:数ヶ月は、会社または工房で実践力を学び、その後まとめて数週間学校に通う



図1デュアルシステムの研修の形の図



基本的には、上記の仕組みで実践的な技術力と理論を習得し、2年目に中間試験「Zwischenpruefung(ツヴィッシェンプリューフンク)」を受けます。


ゲゼレの試験を受け合格した人には、ゲゼレ合格認定書「Gesellenbrief(ゲゼレンブリーフ)」が付与されます。


試験は、実技(長時間の実技試験)と筆記試験の合計点で合否が判定され、上位何名ではなく、取得した点数で判定されます。(吹き出し)


研修開始後、3年から3年半で、プロとしての認定国家資格「ゲゼレ」を取得できるようになります。

研修期間は職種によって異なります。例えば整形靴や義肢装具士などの職種は3年半が原則になります。



実際、ダヴィンチインターナショナルのプログラムの参加者の中には、優秀な場合に2年、または2年半で国家資格ゲゼレを取得する人も実際にいます。









ここまでがマイスター制度の第1ステップ、「ゲゼレ」までの道のりです。


「ゲゼレ」とは、ドイツにおいてはそれぞれの職種において、「スペシャリスト」としての国家資格の認定を受けた者になります。

実務試験は多くの場合、7時間以上の長い試験を経て、その技術力と創造性、時間内に商品として仕上げる実力があって、はじめて合格することができます。


「ゲゼレ」になった人は、さらに実力をつけ、マイスターへの道を歩む人もいれば、ゲゼレ自体がすでにスペシャリストとしての認定資格のため、ゲゼレとしてずっと職務経験を積み重ねていく人もいます。


ドイツ人からはよく、ゲゼレ取得後は、隣国で実力をつける人の話をよく聞きます。

現在、毎年お世話になっているケルン手工業会議所の方も、ゲゼレ取得後に、スペインやフランス等複数の国で経験を積んできていたり、ホテルマンとしてゲゼレを取得して、その後フランスやイギリスに渡った仕事仲間もいます。

また、製菓のゲゼレとしてニューヨークに渡たる人もいます。


日本人でゲゼレを取得した方は、隣国のオーストリアやスイスなどのドイツ語圏の国に渡る方もいますし、もちろん帰国後にゲゼレとして活躍する方もいます。


キャリアアップ=マイスターへの道







ゲゼレを取得後のさらなるキャリアアップが、「マイスター」になります。

キャリアアップとしてマイスターになるためには「技術力」、「開発力」はもちろん、「教育学」、「経営学」の4本柱を習得し、試験に合格する必要があります。



技術力


「技術力」は、ゲゼレの段階で一旦その職種のプロと認定されますが、実際に卓越した技術、あるいは広い範囲での技術は、ゲゼレ取得後に身につけていきます。


幅広い技術力を身につけていくことになり、より幅広い技術を身につけていく印象を受けます。


開発力


「開発力」は、顧客のニーズを広く拾い、新しい商品の開発や新しい技術を開発していくことを身につけます。


実際にマイスターになると経営者として活躍していく場合も少なくなく、その場合は、現場のマイスターに製造を任せ、経営者であるマイスターは、「営業力」を備えることが多いです。


営業力とは顧客からのニーズを拾い、新しいニーズに応えていくために、製造部門と新しい商品開発をしていくことにつながります。


時代の変化に応じた技術力の開発は、どの時代にも必要なスキルであり、それぞれの職種のマイスターにとっても例外ではありません。


実際に日々マイスターと接していると、この開発力が優れているマイスターは、やり手な経営者である印象が非常に強いです。


教育学


「教育学」は、マイスターになったときに、ゲゼレを目指す研修生を教育することになるため、ゲゼレの育成方法を身につけます。


自分の技術をどのように伝授していくのか、ドイツのマイスター制度においては、やり方を見せることはもちろん、その作業の意味合いや意義を、研修生に言葉で伝えていく努力をしていることがよくうかがえます。


経営学


「経営学」は、実際にマイスターになり、起業や開業することを念頭に、簿記などはもちろん、原価計算、事業計画など、経営者として必要不可欠なスキルを学びます。

実際に手工業マイスターのうち、41種類の職種においては、このマイスターの資格がないと開業することができません。


マイスター資格が開業資格になっているため、この経営学は非常に重要になります。


各職種によってこの試験の内容は大きく異なるため、この場では、マイスターになるために上記の4本柱を習得し、合格した人にのみマイスターの称号「Meisterbrief(マイスターブリーフ)」が授与されることを伝えておきます。


「マイスター」の称号を得た人は、教育者であり、経営者でもあるという教育の仕組み自体が、日本の匠や職人さんと異なる点ともいえます。





日本はものづくりの職人さんたちが、後世の育成の仕方や、経営について教育として学ぶ機会がほとんど見られず、そのため各々個人が自分で習得していかなければならない点がドイツと違い、苦労しているように感じます。


また、この「マイスター」の社会的地位は高く、ドイツ教育研究省のヴァンカ大臣も、大学卒バチュラーとマイスターは同等の地位に該当し、それはEU諸国全域に有効であると発表しています。 【図3の差し込み】


また、「マイスター」がさらに昇格すると「オーバーマイスター」の称号が付与され、行政機関と一緒に取り組む仕事も増えたりします。





マイスターは職種によっては開業資格でもあり、経営者にもなる道があることから、たくさん稼ぐマイスターがいることは実感しています!


スペシャリストの育成、キャリアアップの道をつくるマイスター制度の重要性と課題


職人、そして職業人のスペシャリストとしてのキャリアアップの道、「マイスター」や「オーバーマイスター」という社会的地位を定めているこの仕組みづくりは、それぞれの職業のスペシャリストの社会的地位をあげるためには非常に大切なこと。


この仕組みは、手工業に限らず、営業職、販売職も含め工業系にも適用されるため、ドイツは、ほかの国には類をみないスペシャリストの集団を育成しているともいえます。


このように述べると「マイスター制度」自体は、スペシャリストを育成するに優れた仕組みであるように感じられますが、日本と同様、ドイツにも職種によっては後継者不足、斜陽産業、教育の仕組みが老朽化してきているなどの課題があります。



しかし、議論や軋轢をおそれないドイツ人の性格、そして教育スタイルが功を奏しているのか、それらの課題についても、正面から向き合い、互いに議論し、改善を図っているため、マイスター制度も日々形を変えています。


例えば、現在、IT系の職種については制度の改革が進んでいて、現在大きく分けて4種類だったものが6種類に細分化され、それぞれの職種のプロになる仕組みの構築が行われています。


ドイツは議論好きな国、様々な課題は議論を重ね骨太に改善していく力があります!





まとめ

「マイスター」になるには、通常2段階の教育のステップがあり、それぞれの試験に合格していく必要があります。


第1段階としては、職人または職業人のプロとしての国家資格「ゲゼレ」を、「デュアルシステム」という実践と座学の両方で実力をつけて、その職種のスペシャリストを目指します。


その後、マイスターを目指すための第2段階として、マイスター学校に通い(原則)技術力、開発力、経営学、教育学、の4本柱を学び、試験に合格することで、はじめて「マイスター」の称号を得られます。


おおまかにいうと、ドイツの製造部門を支えているのが、まさにマイスターであり、それぞれのスペシャリストの集団が、労働生産性の高い仕事をし、成果を出しているのが、ドイツという国の特徴でもあります。


今回、ご紹介したマイスター制度、この制度を活用し、日本人でもドイツでチャレンジする道があります。

しかし、実際の就職活動、住民登録、ビザの取得等をまだまだ語学の習得途中の日本人が

その道を自分で築くのはいくつものリスクと不確かな道を歩んでいくことになります。

実際に、ドイツ語が中途半端で労働許可や滞在許可の取得が不安な人を採用するとなると受け入れる会社も躊躇することが多いのが現状です。

そこで、日本人が研修を受けるのに適した就職先に就職を導き、確かな方法で大事なビザなどのサポートをする留学プログラムを提供しているのが私たちの「ゲゼレ・マイスタープログラム」です。


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相談先:

株式会社ダヴィンチインターナショナル






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